雛徒然
ひなつれづれ
- 有職故実
- 有職故実(ゆうそくこじつ)とは、古来の朝廷や武家の儀式・装束・武具などを研究する学のことです。「有識」も「故実」もともに、朝廷や武家に古くから伝わる儀礼の作法や服飾などのしきたりを指します。なお今日、深い学識・見識を持つ人を「有識者(ゆうしきしゃ)」と呼ぶのはその名残です。
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- 三月三日
- 「上巳(じょうし)の節句」ともいい、本来は三月始めの巳(み)の日を指します。陰陽道でいうところの陽が極まった凶日です、だから厄払いの日なのです。元は中国なのですが、厄を人形に移して清めるというのは日本独自の風習です。凶日なのだから逆にこれからは好いことが続く、したがってめでたい日でもある、ということから慶日となったのです。中庸を重んじる東洋ならではの考え方ですね。
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- 人形
- 人形になにかを移して、身代わりにする というのは日本古代からの風習で、赤ん坊の枕元に人形を置いて、病気退散を祈ったりしていました。この身代わり人形という考え方は世界でも類がない風習です。・・・と思っていたら、アフリカやオーストラリアの未開社会にもあったのです。ということは人類普遍の発想なのではないでしょうか?何万年まえからの考え方を、日本は風習として現在にも「ひな祭り」という形で残しているのです。
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- 男雛・女雛の位置
- 男雛と女雛はどちらを左に、どちらを右に置くのが正しいのかとよく聞かれます。俗に、京都が[女-男]、関東が[男-女]と言われます。アジアは本来左側(向かって右側)優位の文化です。中国の皇帝は南を向いて座りました。したがって、太陽が昇る東側、すなわち左側が優位とされたのです。茶道でも歌舞伎でも相撲でも左側が優位とされています。京都市の地図を見ると右(東)に左京区、左(西)に右京区と分けられています。逆ではないかと訝しく思われた方も多いのではないでしょうか。これも、その中間に位置する御所から南を向いて右か左かということだったのです。
- 左側優位のアジアに対して、西洋は右側優位の文化をもちます。近代に入り西洋の文化が国際儀礼として標準化されたため、皇室が左右を替えられました。このことを受けて雛人形の左右も変更され、今では[男-女]の並びが一般的となっています。
- しかし、左側優位の文化は雛人形にいまだ根強く残っています。七段飾りを見てください、長い柄の勺を持っている官女が左、歌を歌っている五人囃子が左、右大臣よりも左大臣が老人になってます。また橘より桜が左、お道具もお茶道具が一番左に位置しています。有職故実に従うなら、あるいは全体の統一をとるなら、京都風の[女-男]ということになるでしょう。ちなみに左京でつくる御人形は京都風です。
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- 雛飾りのイメージ
- お客様と接していてよく思う事なのですが、雛飾りというのは普段めったに見る事がないものです、ほとんどの方が結局自分のものしか知らないのです。当然20年以上前のものです。それを基本にして、「いらない」とか「小さくていい」とか「めんどくさい」とかおっしゃいます。
- 飾り方は時代と共に変わっていいし、本来自由だと思います(基本さえ変えなければ)。俗にいう「七段飾り」「三段飾り」等々は、戦後の高度成長時代に 大量生産のために売る側が考え出した一つの形式に過ぎません。この大きさの人形にはこの台と屏風、この雪洞(ぼんぼり)
の大きさなどという決まりは本来はありません。現代のセンスに合った飾り方でいいと思います。
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- 瓶子(へいし)
- 菱もちの間にある対の花瓶のようなものを何と思われますか。正式には瓶子(へいし)といいます。瓶子の中身はお酒です。そこに薬草を束ねて挿し、薬のエキスの溶け出た物を薬としてお雛様に供えます。生まれたばかりの子供が病気にかからぬように、という親心の表れですね。
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- 値段について
- 三月人形の平均単価は「左京」では20万円ほどです、しかしあまり参考にする必要はないかと思います。たとえどんなに高額なものでも、毎年飾ってもらわなければなんにもなりません、金額の多少ではなく、本当に気に入ったものを楽しみながら毎年飾ってください。
- なんといっても お人形が主体です、お人形さえ決まればあとはある程度なんとでもなります。同じお人形でも周りの飾り方によって5万円から20万円にでもなります。
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- 雛飾りの基本
- 雛のお節句には大きく分けて2つの祈りが込められていると思われます。「健康に育ちますように」と「子孫繁栄」です。生まれてきた子が「健康に育ちますように」と疫病などの厄を人形(ヒトガタ)に移して身代わりにしました。したがって必ず人間の形をしてなければなりません。キティちゃんとかウサギではだめです。またおかあさんのものを兼用というのもおかしな話です。そして「子孫繁栄」という意味も含めて、幸せな結婚を祈念するのです。だから男女カップルでなければなりません。
- 二人目だからといって、童人形ではかわいそうです、次女は一生独身でいいのでしょうか?どんな小さなものでもいいから必ず男女カップルのものを飾ってあげてください。
- 最近とみに増えているのが、お母さんの持っているお雛様を赤ちゃんのものとして代用する傾向です。しかし、これは本来の雛人形の風習(あるいは思想)に反する考え方です。お母さんの人形はあくまでお母さんの人形であり、お母さんの厄をとることでいっぱいいっぱいです。雛人形は女の子の御守りみたいなものです。たとえて言うなら、お母さんの使った受験のための御守りをそのままお子さんに使うようなものです。お子さんはお母さんの代用ではありません、かけがえのないりっぱな女の子です、どんなに小さく安いものでも結構です、その子だけを守るその子だけのお人形を用意してあげてください。
- また 最近気になっている事がもう一つ 収納飾りです。「収納」とあるとあたかも魔法のように小さく仕舞える かのように思われがちですが、決してその様な事はありません、むしろ大きく仕舞う事になります。そして 決まり切ったワンパッケージにすることにより、大量生産化しオモチャになってゆくことを大変危惧しています。飾る楽しさ、愛でる楽しさを捨てないでください。
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- 雛祭りの楽しみ方
- 基本さえ押さえておけば あとは自由に楽しんでください。地方によりさまざまな風習があります、各家によっても続けてきた決まりもあるかと思います。ある地方では、お雛様が出たら毎日影禅をする風習があります、またお雛様を片付ける前日の夜には お疲れ様の意味を込めてお雛様を寝かすというのもあります。お寿司ばかりがご馳走ではありません、雛祭りの日には伝えられてきた「おふくろの味」というのもひとつです。左京では江戸時代の献立を提供しております。
- 風習がなければ、新しく作ってもいいのではないでしょうか?祖母から母に母から子に、心を形にして伝える方法は沢山あるかと思います。「家ではこんなことをしているよ」ということがあったらぜひ投稿してください、集まったらアップしていきたいと思います。
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- セット売り
- 雛人形飾りは多くの部品 多くの職人さんの手によってできています。台・屏風(びょうぶ)・雪洞(ぼんぼり)・御道具・頭(かしら)・人形。それぞれまったく別の工房で作られています。本来はそれぞれが商品なのです、お店に飾ってある雛飾りは 問屋さんあるいは小売屋さんがたまたま組み合わせたセットにすぎません。セット全体の雰囲気も大事ですが、一つ一つの部品を見て、組み換えを楽しんでください。左京は基本的にセット売りではありません、一つ一つの単品売りです。
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- 人形は顔ではない
- お人形の値段はどこで違うのですか?という質問をよく受けます。お顔ですか?いえ違います。衣装ですか?いえ違います。お人形の値段の差は「着せ付け」です。お顔は今はほとんどが石膏でできています、京製の頭を除けば顔の差額は数千円です。衣装の差といっても人形に使われる衣装の分量はさほど多くありません、帯を使ったところで値段の差は5万円を下りません。
- それに比べて人形の着せ付けの差は非常に大きいのです。お人形の胴体部分だけで 量産品と作家物とでは20万円以上の差があります。したがって、人形の差はお顔ではなく着せ付けです。つまり、人形師で決まります。着せ付けの差をじっくりと比べてみてください。お店に来ていただければ丁寧に説明させていただきます。
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- 十二単衣
- お雛様は平安時代の貴族の衣装です。このころ遣唐使が廃止され日本独自の文化が生まれました。その一つが十二単衣です。十二単衣とは12枚の単衣(ひとえぎぬ)という意味ではなく、「それほどたくさん」という意味です。実際には白の下重ねには別にして五枚に単衣が一枚、五つ衣が決まりだったようです。
- 当時は布に柄を織り込むのは大変技術を要したので、平織りの地紋の入った布に草木染めをして、その色の組み合わせでオシャレを楽しんだそうです。いわゆるカラーデザインです。
- 王朝の人々はその色目を自然の四季からとりました。春には梅重ね、桜重ね。夏は菖蒲つつじ。秋は紅葉や山吹。冬はススキと雪の下。その他にも、源氏物語では紫の上が源氏のそれぞれの姫に似合う重ねをコーディネイトしている様子が描かれています。
- この楽しさを現代にもとカルタにしました。それが「いろはかるた」です。かるた遊びともに日本の色の名前と枕草子を楽しみながら覚えてもらえます。
- cf.重ねの色目・衣装の柄
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- 修理について
- お客様からの問い合わせによく雛人形の修理を依頼されることがあります。
- 左京では基本的にはお断りしています。雛人形はお子様の身代わりがその役目ですから、手が折れたり顔が汚れたりというのは、その子の身代わりになって汚れたのです。お雛様は役目をはたしているからこそ汚れるのです、古くなって汚れた雛人形こそ大切にしてください。
- 小道具類であれば、壊れたりなくなったりしたものについては、お取替えまたは新品補充いたします。
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